センチメンタルグラフティの音楽を解析してみる

この記事は、当サイトで行われている「センチメンタルグラフティアドベントカレンダー2018」の第17日目の記事です。

※当記事で採り上げる楽曲はセンチメンタルグラフティのキャラクターソング・デビューシングルに絞っています。セカンドマキシなどは参考程度です。

コード進行

コード進行』という言葉を、誰しも聞いたことがあると思います。

音楽にコード進行は欠かせない要素です。
簡単に言うと、心情の表現を司る機能を持っていると言えます。

センチメンタルグラフティの楽曲も例に漏れません。
むしろ、センチのような楽曲こそ、コード進行は生命線と言えます。

センチの曲を分析してみる

調はその曲の性格を特徴つける重要な役割があります。センチの曲に半長調半単調という曲はありません。

Ⅰ から始まる曲

「Ⅰとは、いわゆる『ド・ミ・ソ』です」と、小学生の音楽の授業ではないので、いちいち説明しませんw

センチの楽曲のほとんど。Ⅰで始まる曲では、BメロでⅠが使われることは少ないです。

Ⅵ から始まる曲

  • Two Dreams イントロ
  • せつなさ炸裂したヒロインを市外で見つけた時の曲

Ⅳ から始まる曲

Bメロや、サビの始まりで使われることが多いですが、曲の始まりで使われると独特の浮遊感があります。

  • Long Distance Call イントロ
  • 一枚の風景 Aメロ

※参考

『彼と彼女のサングラス』のイントロはⅱで始まります。珍しいです。恐らく優のキャラクターイメージでないと作れないのではないでしょうか?

長調Ⅳと単調ⅱは対になっていると言えます。やはり独特の浮遊感があります。

Bメロへのブリッジ・サビへのブリッジ

Ⅴ(ドミナント)を『ソ・シ・レ・ファ』の音で作ると、ちょっと古臭い印象なので、センチ楽曲ではⅤsus4『ソ・ド・レ』が好まれて使われています。

曲の終止形

センチは圧倒的に長調の曲ばかりですが、当然終止形はⅠで終わることになります。

Ⅰへの戻り方のバリエーションは、何パターンもそうそうないので、ある程度テンプレートに乗っかることになります。

  • Ⅴ→Ⅰ : ファーストシングルはほとんど
  • Ⅳ→Ⅰ : セカンドマキシでは、かなり使われている

ちなみにセンチ楽曲でフェードアウトは1曲もありません。
エンディングもちゃんと完結させられる力が制作陣にはある、という事です。

センチ楽曲でよく使われているコード進行

現在の日本の商業音楽には曲の途中に『カノン進行』や『王道進行』と言われるお約束的なコード進行があり、これから外れると聴く人は「おや?」とか「変わった曲」と感想を持つことが多いです。
これはセンチ楽曲も例に漏れません。

最近の曲ですと『小室進行』も主流になっていますが、センチ楽曲に小室進行は1曲もありません。

小室進行を生んだ張本人、小室哲哉が爆発的にヒットを飛ばした80年代後半、小室進行は小室哲哉の専売特許のように扱われていたと記憶しています。
…と言うよりは他の作曲家は小室進行を敬遠した風潮もあったように思います。

センチ楽曲に小室進行が1曲もないのは、そのような背景があったからなのかも知れません。
80年代後半当時は、私も小室進行は嫌いだったので…

しかしこれらのコード進行だけで曲は作れず、その曲の個性を決定づけるようなフレーズというものがあります。
野球で言う「メシを食う球」というのが、音楽にもある、という訳です。

曲の頭にサビがある曲

一般的に、曲の頭にサビがあるとアピール度が高くなります。

  • Long Distance Call
  • Two Dreams

サビとメロディーラインは密接な関係ですが、どういう”コード進行という生地にメロディーを縫うか”は重要です。

ここで結論を言いますと、センチの楽曲は非常によくできています。
商業的に成功させるために楽曲を計りに乗せつつ、反面、採算度外視的なキャライメージを尊重した作りにもなっています。

音楽プロデューサーの濱田智之氏の実力は折り紙つきです。

ちょっと例えるのが難しいのですが、「本来なら4番線に到着するはずの列車は4番線からしか出発できないのだけれど、出発するときは2番線のほうが見栄えがいいので、理にかなった方法でそうしてしまう。」ということができる人です。
ほかにも「1番線到着を4番線出発」とか、色々あります。

そういった濱田氏の実力がセンチの楽曲でいかんなく発揮されています。

濱田氏の真骨頂的作品

  • 想い出を止めたままで

※ゲーム中BGMの『想い出を止めたままで』は、異例の「全音音階」が使われています。

メロディラインについて念のため付加しておきますと、先に曲があり後から歌詞を付けるという、最近のメソッドを取り入れているように思います。

詞とは本来、韻があるものなのですが、散文的に書かれた詞には曲を乗せづらいのです。
センチ楽曲の豊かなメロディラインの秘密は、まず曲=キャラクターイメージだったのでしょう。

リズムとハーモニー

そもそも音楽の起源は、神を降臨させるため、万物に宿る精霊を呼び出すために、音の出るものをドンドコドンドコと叩き始めたのが始まりと思われます。
ざっくりですが、これを『アニミズム』と言います。

しかし一神教のキリスト教ではアニミズムの考え方は都合が悪く、複音による、和音や和声法といった研究が西ヨーロッパを中心に進んでいきます。

※8ビートや16ビートの”ビート”とは、跡がクッキリと残るような”叩く”という意味があります。
アニミズムを良しとしない西洋クラシック音楽では、例えば4拍子を”4ビート”とは言わず”4タクト”というほうがしっくりきます。

17世紀、バッハやモーツァルトの時代に、神や司教・権力者に捧げるものだった音楽が、徐々に大衆のものへと変わっていきます。
そして19世紀後半~20世紀初頭「印象派」の登場により、これらの研究は出尽くしたと言われています。
ドビュッシーの『12のエチュード』とか、聴いてると気が狂いますw

今の日本の商業音楽で使われているコード進行の10倍ほどのバリエーションがあります。
それらを使い尽くせばいいという訳でないですが、楽曲制作陣は、これらの土台がしっかりと固められた上で、今のスタンダード音楽にとらわれず、適材適所の”音”を用いて制作している、と言えるでしょう。

最後に

ここまで書いておきながら、音楽を言葉で解説するのはナンセンス極まりない、と個人的には考えています。

本来なら分析の成果を、楽曲という形で紹介を以て締めようと思っていたのですが、アドベントカレンダー公開までに間に合いませんでした(滝汗)
後日、機会を設けて改めて公開したいと思います。


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