「クラシックゲーム a Go Go」多部田俊雄氏インタビューに見る苦悩と挑戦

先日発売された書籍「クラシックゲーム a Go Go」。
1980 – 90年代、僕たちを取り巻き時代を築いた数々のゲームを取り上げた書である。
奥付の初版の発行日は6月14日となっているが、当記事の筆者は6月の1週目のうちに手に入れた。

このサイトで取り上げるからには、もちろん「センチメンタルグラフティ」にフォーカスしたい。
なにせ、センチメンタルグラフティというタイトルが取り上げられていることはもちろん、同タイトルを窪田正義氏と共に牽引していった多部田俊雄氏のインタビューが取り上げられているのだ。

この記事では書中にあるセンチメンタルグラフティの項目と多部田俊雄氏のインタビューのダイジェストを当記事筆者の見解を含めて書き綴ろうと思う。
※この記事中での混乱を避けるため「当記事筆者」という表現を使っています。


ゲームタイトルとしてのセンチメンタルグラフティの紹介

書の構成としてはインタビューのあとにタイトルの紹介なのだが、この記事の構成上タイトルの紹介のプレビューをさきにしてほうが良いので、先にこちらを紹介させていただく。

割り当てられているページは2ページであるため深掘りはされていないが、その中でも最大限誤解のないように説明をしているのは、やはり書にするだけに上手いと感じた。

ゲーム概要の紹介

ゲーム導入の簡単な説明とシステムの肝になる「12都市めぐり」「せつなさ度」の簡単な説明、エンディングの種類についての簡単な説明がなされている。

当記事筆者はあまり触れないようにしていたが、当書では「切なさ度」が「好感度」と対をなすバッドステータスであることを明言している。当時「せつなさ炸裂!」とラジオでもライブでも言って盛り上がっていたが、つまりはメンタルやられている状態だったのだよなあ、と改めて実感した。

商法について

2ページ目は、甲斐智久氏のキャラクタービジュアルを中心に展開していった商法について、現在のライトノベル・深夜アニメがとっている商法の礎を築いた旨が書かれていた。

これについては当記事筆者も別のブログに書いているので、ぜひそちらも合わせて読んでいただきたい。

残念なのは、甲斐智久氏のビジュアルについては書かれていたが、最後まで大倉らいた氏のストーリーについては言及されることがなかったことか。
個人的には2人がタックを組んでいることで初めてキャラクターに命が吹き込まれたのだと思うのだが…。


多部田俊雄氏インタビュー

多部田俊雄氏に対してのインタビューとしての特集は実に15ページ、途中写真が挿入されていたり、最後のページが2段組の半分しかないことを考慮しても14.25ページにわたる。
そのなかでセンチメンタルグラフティを企画し、発売に至るまで、そして発売後のことについて触れられていた。

主なインタビューの構成を見出しと要約にしてみた。
※実際の見出しではありません。
当記事筆者の雑感を含みます。

序文・NEC系でのゲームチームの立ち上げに

NECアベニュー設立時に多部田氏がどうゲームを事業に組み込むためにチームを発足させたか。
最初は人数が少なく移植タイトルしか発表できなかったことなど、スタートアップとしてやれることをやる姿勢が垣間見えた。

物語性を取り入れ、さまざまな挑戦をした「ヘルファイアーS」

東亜プランが制作しら「ヘルファイアー」を移植する際に、幕間にアニメーションのデモを追加し、声優を起用した。
エンディングもハッピーなものではないものを採用するなど、本人もいろいろな意味で「早い作品だった」と言っている。

エロゲーからギャルゲーへ。「ドラゴンナイトⅡ」との出会いと「ギャルゲー」の市場定着

アダルトゲームを家庭用コンシューマーに移植するという挑戦が見られる項。
先にメディアに発表して事後承諾を得るという外堀を埋める作戦をとったことや、「ドラゴンナイトⅡ」のヒットを皮切りに「卒業」「同級生」などヒットを飛ばす傍ら、「ときめきメモリアル」の後押し(かどうかは不明だが、あえてこう言わせてもらう)もあって、「ギャルゲー市場」が確立されていったこと、完全なゲーム事業としてのNECインターチャネルの設立の話が盛り込まれている。

「センチメンタルグラフティ」の企画発足における苦悩と挑戦

甲斐智久氏の鉛筆画を窪田正義氏から見せてもらったことから発足した「センチメンタルグラフティ」のプロジェクト。
NECインターチャネルとしては販売権はあったがマルチメディア展開においてグッズ展開等に関しては一切関わっておらず金銭の授受もなかったこと。任せすぎた結果ゲーム内のグラフィックが多部田氏の意図に沿っていなかったこと。その手法が必ずしも間違っているわけではないこと。作品自体の周りからの評価を経て、心が折れ、マルチメディア展開に対するトラウマを持ってしまたことなど、興味深い話がてんこ盛りだ。

独立してから「センチメンタルグラフティ」を振り返って気づいた「本物」

多部田氏が独立し「プロトタイプ」を設立してから「センチメンタルグラフティ」に影響され業界に入った人等と出会い考え方を変えていったことが触れられている。
その中で多部田氏はプロジェクト全体としては展開したことについては「本物だった」と。

20周年企画のことにも少し触れていた。
今もまったく動きをみせない @senti_20th だが、それを含めた20周年プロジェクト自体は確かに正規プロジェクトであり、以下のように述べている。

現時点では詳細は明かせないのですがあえて言えることがあるとすれば「多部田は後方支援で、ファンの皆さんが最も喜ぶ方々が主体となっているプロジェクトです」

最も喜ぶ方々とはだれのことだろうか。
甲斐智久氏や大倉らいた氏を再び迎え入れてあらたな「センチ」を織りなすという意味なのか。蓋を開けてみないとわからないので、今後の動向にはやはり注目すべきなのだろう。


「クラシックゲーム a Go Go」は手元においておくにふさわしい一冊

「クラシックゲーム a Go Go」で取り上げられている数々のゲームの中には、当記事筆者の生まれる前のゲームもあったり、そもそも知らない筐体やソフトウェアもある。しかしながら実際にプレイしたことのあるゲームもたくさんあった。

当時インターネットが普及しておらず(していても使う機会がなかっただけかも知れない)、ゲームの攻略や新作ゲームや筐体の情報収集といえばゲーム雑誌やテレビ・ラジオ番組の情報や、どこからか湧いてきたも口コミ等が主だった当時、いろいろな噂や憶測が飛び交ったものである。その裏側も見ることができたり、時勢を感じた者としての懐かしさを体験することができる。
そういう意味で、ぜひ手元においておくべき一冊だと思っている。

皆様も是非購入という形で手に取り、「センチメンタルグラフティ」以外に取り上げられているゲームの項目やインタビューを読んで、あのころ熱かった自分を取り戻してはどうだろうか。

書籍の購入は以下リンクで購入か、書店に足を運んでどうぞ。

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